個展「way」
2025年7月4日(金)〜6日(日)、2025年7月11日(金)〜13日(日)
11:00-19:00 *19:00-22:30は夜間ショーウィンドウ展示
Gallery187(東京都世田谷区北沢1-8-7)

挨拶文
本日はお忙しい中、個展「way」にお越しいただき、誠にありがとうございます。
私は「かたち」をゼロから生み出すというよりも、すでに存在するかたちを選び取ったり、ものの見方を変えたりすることで制作を行っています。今回は、その手法のひとつとして「Folded Box Shape」シリーズをご紹介しています。本シリーズは筑波大学の卒業制作展に出品した作品であり、本展では卒業制作作品の一部に加えて、新たに制作した作品を数点展示しています。
本作のモチーフは、すべて既製品の組み立て式紙箱です。組み立て式の紙箱をよく見てみると、差し込み部分や取手部分などに、思いがけず愛らしいかたちが潜んでいることに気づき、このシリーズが生まれました。もともとの折り目を活かしながらも、本来の組み立て方とは異なる方向に折り進めていき、最終的には概ね長方形の形になるまで折り畳みます。そして、箱の表裏に従ってアクリルガッシュで二色に塗り分けてキャンバスに描画しています。
これらの抽象的なかたちは、私がゼロから生み出したのではなく、既製の紙箱から選び取ったかたちです。紙箱は「ものを入れる」という目的のために存在していますが、その用途に沿って見ると、かたちそのものにはなかなか目がいきません。しかし、その目的からいったん離れて、かたちを生み出す手段として見つめ直してみると、構造の中に独自の魅力が隠れていることに気づきます。一定の構造的なルールはありつつも、種類や寸法が少し違うだけで、かたちは意外なほど多様で個性的です。
本展を通して、紙箱に限らず、私たちの身の回りにあるさまざまなものを“かたちを生み出す仕掛けづくりのアイテム”として捉え直すきっかけとなれば幸いです。用途に意識が向いているとかたちそのものを見落としがちですが、意識的に新しい見方を心がけることで、思いがけない造形表現の仕組みが見えてくるかもしれません。
令和7年7月
矢作百花
矢作百花